10年前と比べて平均気温が上昇し、夏場はクーラー無しでは命の危険を感じるほどになりました。
その原因のひとつが温室効果ガスです。
温室効果ガスとは大気圏にある温室効果をもたらす気体のことで、具体的には水蒸気、二酸化炭素、メタン、一酸化炭素、フロンなどです。
近年はこれらの気体が大気中の濃度を増し、地球温暖化が進んでいます。
気象庁のデータによると、もっとも大きな温室効果ガスは二酸化炭素です。
石炭や石油の消費、セメントの生産などにより大量の二酸化炭素が大気中に放出され、その二酸化炭素を吸収してくれる森林が減少していることで年々二酸化炭素が増加してしまっています。
次いで地球温暖化に及ぼす影響が大きな温室効果ガスはメタンです。
天然ガスを採掘する時に発生するこのメタン、実は家畜の「げっぷ」にも含まれています。
今回はわたしたちの食生活を見直して、少しでも地球温暖化と環境汚染をくいとめる方法を一緒に考えてみませんか。
畜産が及ぼすCO2排出の現状
家畜が及ぼす温室効果ガスについての文献によると、まず、1750年の産業革命時より、2014年の大気中の二酸化炭素の量は、なんと43%も増加しています。
その原因は農業、そのなかでもとりわけ畜産業と考えられています。
畜産業とは私たちが必要とする食料や服などを得るために、家畜を利用する産業で具体的には「乳、肉、卵、毛皮、蜂蜜」などの生産を指します。
野菜の畑よりも環境汚染に悪い影響があるのは畜産業で、エンドウ豆の生産と比べると、牛肉の生産は温室効果ガスの発生量が約6倍にのぼります。
畜産業による温室効果ガスの発生量は、2013年のデータによれば7.1ギガトンで、数字だけではあまりピンときませんが、これは地球全体の14.5%をも占めています。
そして2013年の7.1ギガトンだった温室効果ガスの発生量は2018年までにさらに増加し、畜産業だけで温室効果ガスの発生量は13.7ギガトンまで達しました。
また、牛肉を生産するにはエンドウ豆と比べて36倍の土地が必要となるので、森林破壊の面でも悪影響が出てしまうのです。
フランスでの取り組み「菜食主義」 と「フレキシタリアン」
「ヴィーガン」という言葉は日本ではあまり聞き慣れないかもしれません。
ヴィーガンを日本語に訳すと『完全菜食主義者』です。
植物性食品から作られたものだけを食べ、卵や乳製品を含む、動物性の食品を一切口にしません。
日本でヴィーガンの人口は少ないですが、ヨーロッパでは環境問題に取り組む団体やヴィーガン主義者が多いため、レストランで肉を注文するのに躊躇するほど気を遣ってしまうこともあるそうです。
注目すべきは、最近菜食主義でも時々肉・魚も食べる柔軟な「フレキシタリアン」が増えていることです。
フレキシタリアンとは、ヴィーガンのような完全な菜食主義ではないけれど、「今日はお肉を食べるのをやめよう」という選択をする人です。
農林水産省による2021年3月『ベジタリアン・ヴィーガン市場に関する調査』ではフランス人の50%が肉の消費量を減らしたと回答しており、そのデータからもフレキシタリアンが増加していることがうかがえます。
環境問題に取り組む人たちが肉をやめたり、減らしたりするのには理由があります。
私たちが肉食を制限、または中止すれば畜産業が占める温室効果ガスの発生量を大幅に減らすことができるからです。
具体的なデータでは、肉食者が起こす温室効果ガスの発生はベジタリアンより50~54%大きくなり、卵や蜂蜜、乳製品も飲食しないヴィーガンより99~102%多いのです。
肉だけにたよらない食事の工夫
肉や乳製品の飲食を完全にやめなくても、制限するだけで個人レベルでは環境汚染や温暖化をくいとめるために寄与することができます。
そして私たちは肉や乳製品以外の食べ物からも、タンパク質やカロリーを摂取できることを知る必要があるのです。
今ヴィーガンやベジタリアンに注目されている食材が「きのこ」です。
ベルギーでは秋になると様々なきのこが出回ります。
日本では見かけない、ジロール茸、羊の足の形のきのこ(Pied de mouton)、黄色の平茸、黒トランペット茸などもあれば、日本でもなじみのあるポルチーニ茸やアミガサ茸(モリーユ)、高級食材のトリュフもあります。
そして日本で有名な椎茸も『Shiitake』という名前で売られており、「まいたけ」や「なめこ」も日本名で売られているようです。
ヨーロッパでの健康ブームと、ベジタリアンやヴィーガン人口が多いことから、低カロリーで成人病の予防に効果があるきのこに注目が集まっているのです。
きのこをスープやポタージュにしたり、たくさんの種類のきのこを炒めたりするなど、料理の幅は広がります。
まとめ
今、地球温暖化はとても深刻な環境問題です。
その原因を考える時、「排気ガスを出す車や、飛行機が一番の問題だ」という一般的なイメージがあるかもしれません。
でも少し私たちの食生活を見直し、「週2回はお肉の日をやめてみよう」と実践するだけで結果的に温室効果ガスの減少となり、環境汚染をくいとめていることになるのです。
肉の代わりになる栄養価の高い食材を生かして、無理しない範囲で、身体にも環境にも良い食事づくりを心掛けたいですね。
参考
気象庁
東京大学人文社会系研究科文学部欧米系文化研究専攻現代文芸論研究室 畜産業から生じる諸環境問題
農林水産食品部・食品課 ベジタリアン・ヴィーガン市場に関する調査(英国、フランス、ドイツ)