竹は昔から日本各地域で育てられていました。たけのこを収穫できるだけでなく、「かご」や「ざる」などの日用品や建築資材、垣根などの庭園資材、楽器、七夕や正月飾りなど、竹にはさまざまな用途があります。竹は日本人にとって馴染み深いものですよね。
しかし、最近では竹林が放置されており、竹害の被害が日本で深刻化しているのです。なぜ竹害が深刻化しているのか、あなたはご存知でしょうか?実は放置竹林は、あなたの住んでいる家の近くでも起きているかもしれない身近な問題なのです。
この記事では、なぜ竹林が放置されてしまったのか、竹害の現状と対策と合わせて解説しています。竹害やそれを防止する対策について、一緒に学んでいきましょう!
竹害が起きる原因となる放置竹林問題とは?
放置竹林とは、言葉の通り「管理されずに放置された竹林」のことです。では、放置された竹林がなぜ竹害として「問題」になっているのか、詳しく見ていきましょう。
竹の繁殖力が高く、森林を侵食してしまう
竹は非常に繁殖力が強いことが特徴です。農林水産省が発行する広報誌「aff(あふ)」の記事「2021年3月号 身近で不思議なタケの生態に迫る!」によると、竹は植えてから半年で若竹へと成長し、地下茎も最大で年に5メートルから8メートルも伸びたという記録があるとのこと。
つまり、竹は驚異的な成長速度で縦にも横にもよく伸びるため、森林に太陽が当たらなくなり、土の中にある水も吸収してしまいます。
竹林の管理に手間がかかる
繁殖力の強い竹林は少しでも放っておくと次々と竹が生えてくるため、管理するのに手間がかかります。そんな竹林を放置すればどうなるかは察しがつくでしょう。
至るところからにょきにょき生える竹でいっぱいになった竹林を昔から行われている伐採方法「連年皆伐式」ですべて伐採しようとしても、完全に竹を枯らすまでに数年もかかります。
竹害の現状は?
「驚異的な繁殖力」を特徴に持つ竹は、「管理の大変さ」から放置してしまうと「竹害」を引き起こす可能性に繋がります。そんな竹害の現状について説明していきましょう。
土砂崩れを引き起こす可能性がある
2004年に『日本地すべり学会誌』から発行された「都市周辺山麓部の放置竹林の拡大にともなう土砂災害危険性」には、竹林調査と竹林土壌の物理試験を現地調査によって実施した旨が書かれています。
その調査結果によると、豪雨災害時に放置竹林は土砂崩れを引き起こす可能性があるとされています。
ルートマットによる土層表面の被覆状 況の変化が土層内の水の流れに及ぼす影響を知るため、人工降雨による実験を行った。その結果、降雨の初期の段階ほど表層被覆部への水の貯留効果が顕著であることが確かめられた。ルートマットより下位にある土層の条件次第では、斜面平行方向の流れが生じ斜面の不安定化に寄与する可能性が示唆された。
引用:『日本地すべり学会誌』都市周辺山麓部の放置竹林の拡大にともなう土砂災害危険性
竹が倒れる危険性がある
竹が生えすぎてしまった放置竹林には太陽の光が当たりにくくなるため、竹が腐って倒れる危険性があります。
野生動物の住処になり、農業被害の原因に
民家の近くにある放置竹林は、食べ物を探しに来たイノシシやサル、シカなどの野生動物の住処になる可能性があります。そのため、放置竹林が農業被害の原因のひとつになってしまうのです。
また、2020年に農林水産省によって行われた調査によると、 野生動物による農作物の被害総額は約161億円にも上るとの記載があります。
竹害が起きるようになったのはなぜ?
このように竹林が放置されることによって、さまざまな竹害が引き起こされる可能性があることが分かりましたね。それでは、そもそもなぜ竹林が放置されるようになったのでしょうか?
生活スタイルの変化
まず挙げられるのは、日本人の生活スタイルの変化です。文明開化によって日本に西洋の文化が入ってきたことから始まり、1955年に高度成長経済期を迎えた日本は民官を挙げて洋風化が進められていました。
それから現在に至るまで、日本人の生活スタイルは大きく変化し、洋風化したことによって竹の需要が低下したのです。
竹の代わりとなる資材の登場
そして、竹の代わりとなるプラスチックなどの資材が登場したことにより、竹製品が使われる機会が少なくなりました。
安価な輸入品の増加による国内の竹材需要の低下
林野庁のデータによると、竹材の輸入量は平成7(1995)年から減り続けていますが、昭和45(1970)年から輸入量が急激に増えていることが分かります。
一方、竹材の国内生産量は昭和45(1970)年から減少しており、その理由は竹の生態にあります。竹は数十年~百年の間に「花が一斉に開花し、枯れてしまう」という生態を持っており、昭和42(1967)年以降はその現象が各地で起きたため、国内竹材の供給量が激減しました。そのため、安価な輸入品を頼ることにも繋がったのです。
また、国内生産量と輸入量ともに減少傾向にあることからも、国内の竹材需要が低下していることを示しています。
人手不足
最後に、竹林を整備する従事者が足りなくなったことも、竹林が放置されるようになった原因のひとつだと言えます。
人の手によって植えられた竹が放置されて放置竹林となり、それを整備する人手の確保も難しいのです。
竹害防止のための対策は?
それでは、竹害を防止するためにどのような対策が行われているのでしょう?ここでは竹害防止のために林野庁が行なっている対策の一部をご紹介しますね。
対策①森林整備事業
まずご紹介する竹害対策は、林野庁で行っている森林整備事業です。竹林が森林を侵食しないように森林内に侵入した竹の伐採と除去、間伐などを行なっています。森林を整備することで、竹害対策も行っているということですね。
対策②竹材の紙としての利用
2011年にグリーン購入法の特定調達品目である「紙類」の原料パルプに「竹パルプ」を追加しています。この取り組みも竹害対策のためだと言えるでしょう。
また、グリーン購入法に「竹パルプ」を追加したことによって紙として竹材を利用しようという動きが高まり、2011年以降の竹材の国内生産量が少し上昇したことにも繋がりました。
竹の製品にも目を向けてみよう!
これまで放置竹林問題によって引き起こされる竹害の現状とそれを防止する対策について解説しました。よく考えてみれば、竹製品や庭園にある竹の垣根、行事で使われる竹など、見かけなくなった竹の製品ってたくさんありますよね。
今回ご紹介した対策のほかにも、最近ではサステナブルな資材として竹材が注目されています。竹材を使った商品化はもちろん、メンマや竹チップ、竹炭など、さまざまです。この記事を読んだことをきっかけにして、竹の製品にも目を向けてみてはいかがでしょうか?