私たちにとって、身近な食材の「椎茸」。
とくに煮物など、出汁が決め手となる和食にはかかせない食材ですね。
スーパーで購入する時には石づきの部分でカットされパックした状態なので、椎茸がどのように生えているかを見る機会はなかなかありません。
椎茸には自然栽培の「原木椎茸」と人工的に栽培する「菌床椎茸」の2通りがあるのですが、今回は「原木栽培」についてご紹介します。
どんな木から椎茸が収穫できるのか、そして椎茸を収穫した後の木(原木)はどうなるのかについて説明していきましょう。
実は椎茸はとってもエコロジーな食材なので、ぜひこの機会に椎茸の魅力を感じていただけたら嬉しいです。
原木椎茸栽培~伐採から収穫まで~
椎茸の原木栽培は、その字のごとく椎茸栽培用の「原木」を伐採するところから始まります。
木の種類は「クヌギ」「コナラ」「ミズナラ」などが適しています。
伐採の時期は紅葉した後から春の新芽の時期までで、木の根元から切り倒します。
葉を付けたまま切り倒しておくと、段々と葉から水分が抜けて「葉枯らし」となり、植菌に適した状態になっていきます。
伐採した原木は1mほどの長さに切り、約1カ月は直射日光に当てないように管理します。
伐採した木の切り株からは、春になると新しい芽(ひこばえ)が芽吹きます。
この新しい芽は再び二酸化炭素を吸収しながら成長していきますので、それを繰り返し、健康的な森が維持されるのですね。
1mに切って管理した木は2~3月になると、植菌作業を行います。
植菌を終えた原木は菌糸の活着をするため、日当たりの良い林で保湿に注意しながら「ホダ木」を棒積みしておきます。
「ホダ木(ホタ木)」とは椎茸を栽培する時に種菌をつける原木のことで、それを育てる場所を「ホダ場」と呼びます。
早ければ植菌した年の秋から椎茸が発生しますが、本格的には植菌から2夏で発生し、4~5年間継続します。
椎茸を栽培し終わった「廃ホダ木」はどうなるのか
①薪に再利用
原木栽培のほだ木は椎茸を収穫した後,樹皮がむけた状態になります。
使用済みの原木のことを「廃ホダ木」と呼びます。
廃ホダ木は、ビニールハウス等の暖房用に灯油の代替燃料として再利用されます。
椎茸を生やし尽くしてスカスカになっているため燃え付きがよく、釜戸の燃料として再利用するのは最適だということです。
そしてこの廃ホダ木を再利用すれば燃料代がかからないので、経済的ですよね。
②昆虫採集
椎茸の菌糸で分解された廃ホダ木は、朽ち木を食べる虫にとっては最高の食材となります。
そのため、廃ホダ木の中からは様々な虫がポロポロと転げ出てきます。
樹皮を剥がすと、たくさんの虫、例えばダンゴムシ、ムカデ、ゲジ、カメムシにミミズ・・・
運が良ければクワガタにも出会えます。(昆虫採集は手袋をして行いましょう)
倒木を椎茸栽培に再利用した京都の鉄道会社の話
京都新聞の記事にて、沿線の倒木や間伐材などを活用してシイタケ栽培をしている鉄道会社、叡山電鉄の取り組みが紹介されています。
叡電鞍馬線は周囲に山林が多く、線路近くに伸びた枝葉や倒木を定期的に伐採して処分してきました。
「いつも処分している樹木を何かに再利用できないか」と社員有志で検討した結果、同社の土産品「えいでん原木しいたけ」が誕生しました。
2017年に原木約20本に菌打ちしたところ、夏でも涼しく適度な湿度で生育に合った環境だったため、2018年秋に初の収穫を迎えることができました。
直径6~10センチの「肉厚でおいしい!」と評判の椎茸だそうで、翌年以降は「干椎茸」として出町柳駅や八瀬比叡山口駅前で販売しているとのことでした。
いつも捨てていた木から椎茸栽培を成功させた叡山電鉄の取り組み、素晴らしいですね。
まとめ
椎茸栽培で使われる原木「ホダ木」は、椎茸を収穫した後捨てられるのではなく、薪などに再利用されていることが分かりました。
またいつも破棄していた倒木を、椎茸栽培に活用した叡山電鉄の取り組みがあることを知りました。
このようなことを学ぶと、「身の回のゴミだと思っていたものが他のものに活用できるのではないか」と考えてしまいます。
いつも廃棄している生ごみ、例えば卵の殻や野菜クズなどをゴミとして燃やすのではなく、別のものに再利用できるものがあるのではないか・・・
私も家庭レベルでできることを考えて、色々と試してみたいと思っています。